令和2年5月1日 理事長 國富 敬二
今年1月に中国・武漢市で新型コロナウイルスによる死亡者が報告されてから、間もなく4カ月が経とうとしています。この間、全世界で23万人以上の方々が新型コロナウイルスで命を落とされています。亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、罹患され、苦しんでいる方々の一日も早いご快復を念じさせていただきます。
このような世界的危機のなか、最前線で懸命に立ち向かっている医療従事者の皆さんをはじめ、私たちが社会生活を維持する上で欠かすことのできない職務に就いてくださっている多くの方々に、心より感謝を申し上げます。
本会では、新型コロナウイルスの流行に対しまして、まずは感染の拡大防止に注力し、自らの命を守るとともに身近なサンガの命を守り、ひいては、日本、世界の人々の命を守るということを第一義としつつ、人々の不安に寄り添うことにも努めてまいりました。
緊急事態宣言を受けまして、道場の閉鎖をお願いさせていただきました。信者さん方も不要不急の外出だけでなく、日々の布教もお控えいただき、ご自宅でお過ごしのことと思います。我慢を強いられる暮らしにストレスを感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、自宅に留まるということこそが菩薩行であり、自他共に多くの命を救っているという意味を深くかみしめてくだされば幸いです。
新型コロナウイルスに罹患され、家族にも看取られずに人生の最期を迎えられた多くの方々の無念さを思うと、胸が締め付けられます。どうか、このような悲しみがこれ以上広がらないよう、皆さまのご理解とご協力を改めてお願いいたします。
法華経の如来寿量品では、目の前に現れるすべての現象に無駄なものは何一つとなく、仏の境地に至るためにふさわしいものと教えられています。移動が制限されたこの機会は、従来の価値観を見直しなさいという仏さまからのメッセージではないでしょうか。
例えば、二酸化炭素排出の増加による地球温暖化を招いた大量生産、大量消費といういわば「貪欲」にもとづいたライフスタイルを「少欲知足」へと転換させる時でもあるはずです。
また、本会の信仰活動のあり方も大いに見直しできる機会を頂戴したと感じています。会長先生は今年の年頭のご法話で、「即是道場」をお示しくださり、教会道場は練習の場、家庭や職場が第一道場・実践の場とご指導くださいました。日ごろ教会道場で培った練習の成果や功徳を今こそ発揮するときです。
未だ事態収束の見通しが立たないなかではありますが、この新型コロナウイルスを一つの縁としてとらえ、世界中の人々の不安や心配を取り除き、安心を与えられる「抜苦与楽」の菩薩の精神を胸に刻ませていただきたいと思います。
新型コロナウイルスの終息後は、新たな価値のもとに世界は動き出すことでしょう。当然、私たちの信仰や活動のあり方も変化せざるを得ないと思っています。すでに現在、皆さまはさまざまに工夫され、新たなつながり方を模索してくださっておられます。皆さまのそうしたひたむきなお姿が目に浮かび、頭が下がる思いです。
皆さまもご存じの通り、仏教では自他共に救われる道が説かれており、本会では、「まず人さま」の菩薩行のなかに幸せがあると教えられています。
今、人さまにどのようにして安心していただけるか、何が喜ばれるかをご自分で考え、実践していただきたいと思います。私は、お一人おひとりの幸せのために祈り、大小を問わずに心を砕いて実践することが、現在だけでなく未来においても、十分に生かされることだと確信しています。
また、先ほどもお伝えさせていただきましたように、現在はご自宅で過ごさざるを得ないときです。このときを、仏さまから頂いたご法の習学の時間として受けとめ、開祖さまや会長先生、光祥さまのご著書などを通して教えを深めるほか、名著に触れて知識や心を高めていくことも大切です。この期間に得た学びは、今後、必ず人さまをお救いする智慧となるはずです。
最後に私が大事にしている二宮尊徳翁の言葉をご紹介させていただきます。
「この秋は 雨か嵐かしらねども 今日のつとめに 田草取るなり」
この先どのような困難が生じるかは誰も分かりません。目の前の相手や出来事に真剣に向き合い、皆さまと共に務めを果たしてまいりたいと思います。
合 掌
立正佼成会公式ウェブサイトからの転載